2008.07.04 Friday
井上雄彦 最後のマンガ展@上野の森美術館

開期が残り少なくなり、居ても立っても居られなくなってしまったので、急遽休暇を取って行ってきました。
井上雄彦 最後のマンガ展
予想以上に混雑していて大変でしたが(後述します)、行った甲斐はありました。
ああ、観れてよかった!!
展示会の内容としては、バガボンドを丸々一話、描き下ろしで美術館に展示する、というものでしたが、うわ、これ最終回じゃん!!ってな感じで、ショッキングな内容でした。
特に最後のオチが・・・。
美術館の広大なスペースを使ってああいうギミックまでつけられると、ただでさえ感動的な話だったのと相まって、ブルッ!!と寒気がしました。
ネタバレしてしまうと面白く無いので書けませんけど・・・。
絵的にも非常に見ごたえがありました。
普通に、マンガの生原稿を展示しているのですけど、その迫力が凄いのなんの。
ペンのタッチやホワイトの修正、ベタの塗りまで全部分かるわけです。
しかも生だから原寸じゃないですか。
コミックスになると半分以下のサイズになってしまいますから見づらくなってしまいますし、何より、ホワイトやベタのムラなんて誌面には出ません。
つまり、詳細なタッチや筆使いは誌面では見られないわけです。
それが見られただけでも感動ものでした。
線は繊細かつ乱暴で、下描きではアタリだけとって勢いで描いていると思います。
だから弾くように、シャッシャッ!!って描いてるんでしょうけど、そのタッチが見て取れる。
書き込むところは書き込んでますが、はしょるところは力強いタッチで書きなぐってます。
絶妙な不均等さとディフォルメ加減が、絵に見易さと個性を与えています。
背景の書き込みがものすごいです。バガボンドは背景に自然が多いのですが、その自然の息遣いというか、生生しさを見事に再現していると思います。背景は非常に細かく書き込まれていて、エッシャーの版画を思わすような繊細さでした。
噴出しもや書き文字1つ取っても、魂といういうか、力強さを感じます。
人物は当然、漫画絵ではありますが、実は非常に写実的で、鼻の穴まで書かれています。
おじいさんが特にリアルで、ホントに居るおじいさんを想像さえしてしまいます。
もともとデッサン力がある人だと思いますが、この画力は凄いな、と。
でも、線が多いわけでもなく、写実一辺倒ではなく、ちゃんと漫画絵になっています。
生原稿からこれらのことを感じ取れただけでもまず収穫。
さらに、展示会と言うことで、水墨画や墨絵も見ることが出来ました。
サイズは千差万別で、大きいものだと3×3mとかそれ以上、小さいものだと、原稿用紙と同等かそれ以下のものもありました。
水墨画っぽいのもあれば墨絵もありーの、鉛筆画もありーの、また、それらをミックスしたものもありーので、画材と空間を生かしきっていたと思います。
一部、カラーもありました。これはものすごく意味のあるシーンで使われていましたね。あと、ちょっとした立体とか。
さっきから水墨画とか墨絵って描いてますが、もう漫画の域を超えていたから、漫画絵とは思えないわけです。普通に芸術作品としてそれだけでも鑑賞できると言うか・・・。
あ、でも、あくまで漫画のワンカットとして差し込める絵ですよ。
誌面に落とし込んでも違和感無いような。
・・・もう、とにかくすばらしさが語りつくせないです。
こういう展示会は、おそらく井上雄彦という漫画家しか出来なかったと思います。
もし他の漫画家さんにこういうスペースを与えても、大きい漫画絵が飾られるたり、空間を生かしたギミックがちょっとあるかなぁ〜程度のイラスト展にしかならないと思います。
井上雄彦さんは漫画というジャンルの絵を描いておきながら、常にその表現と可能性を模索していたのでしょう。だから、こういう空間を生かした展示や、また、芸術作品としての漫画絵も展示できるのです。
こう書くと、僕が漫画絵をバカにしているように感じてしまうかも知れませんが、そうではなく、漫画絵は漫画というジャンルの中の絵なんです。
だから、漫画絵は漫画の表現手法として昇華された素晴らしい絵なんですよ。
と、絵の話ばっかり描きましたが、最初は足を止めてじっくり絵に見入っていた人たちが、途中からストーリーに引き込まれてどんどん早足になっていくと言う・・・僕もそうだったけど見てて面白かったなぁ。
あー、なんか長くなってしまったので、余談は次の日記に持ち越そうと思います。
とにかく、井上雄彦好きでまだ行ってない人はなんとか観に行ったほうがいいです!!
あなたが、最後に帰る場所はどこですか?